在学か退学か、進路に悩むS君に出会って(前編)

2009.06.18 10:00|学生への思い
 
 教務主任になってからというもの、臨地実習に出て学生と一緒に悩んだり、悲しんだり怒ったりする時間がなくなってきました。一方で、学生との面接が多くなります。その内容といえば、適性の問題や進路変更の相談が多く、学生との隔たりへの思いだけが残ることもあります。
 面接の際には、
「ここで引き止めても果たして看護婦・看護士のチームの一員としてやっていけるだろうか」
「でも、職場や管理者に育ててもらえるかもしれない…」
などと、いろんなことを考え悩むことばかりです。
 そんな学生のなかには考え悩み、時間はかかっても頑張って卒業していく人もいますが、やはり退学していく人も少なくありません。
 本校では基礎看護学実習の頃からそういった内容の面接が始まりますが、面接をするたびにいつも気にかかる元学生、S君についてお話ししたいと思います。

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 S君の看護士への思い - 両親のS君への思い 
 S君は、小児喘息で3歳から小学4年生まで病院に通い、先生や看護婦さんたちにお世話になったおかげで元気になることができた、という体験から、中学のときに看護士になろうと決めたそうです。しかし、高校卒業時の進学受験では力及ばず、1年間の予備校生活を経て本校に入学してきました。

 面接試験時のS君の態度には、落ち着きがあり好印象でした。
 入学後、その落ち着いた態度はどこへいったのか、教務室に入り要件を言うときにも教員と目を合わせられず、実習室の物品、廊下にある額縁、マイクスタンドなどを不注意で壊すことがたぴたびでした。
 学力の面でも、学習時間は人一倍多いものの、成果が上がらず再試験を受ける科目が多くなっていました。担当の教員は何度か面接をし、学習方法や態度について指導を行いましたが、冬季休暇前にはすでに進級できない状況となっていました。
 私もS君と面接をし、休暇で帰省したとき、両親とよく話し合うことを勧めました。休暇後のS君からの報告では、原級に留まっても頑張ることで両親の了解を得たということでした。しかし、1学年を終了するときの成績は、平均点50点未満と惨悽たる結果でした。

 保護者へは、春季休暇中にお話をしたいと電話をしましたが、どうしても来校できないということで、お母様から手紙を頂戴しました。
 その内容は、S君にとって厳しい現実であることを認識し、正直、別の道を…との戸惑いもあったこと、父親とS君の話し合いでもう1年看護の勉強をしっかりやり直して頑張るとの結論になったことなど、親として子どもの希望を叶えさせたいという気持ちが綴られていました。
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『Clinical Study』 2000年12月号(Vol.21 No.14)
後編に続きます)

※この記事は、当校副学校長片桐が教務主任時代に綴り、「心に残るあの学生」としてClinical Sutudy(クリニカルスタディ~看護学生の実習&国試&学生生活応援マガジン~:メヂカルフレンド社刊)にてご紹介いただいたものです。
注:現在使用されていない呼称・名称も、掲載当時のまま記載しております。



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ジャンル:学校・教育

タグ:進路 成績

在学か退学か、進路に悩むS君に出会って(後編)

2009.06.18 09:00|学生への思い

 2年目、S君は2学年の授業を受けながら、単位を取得できなかった科目も受講していましたが、成績に良い変化はみられませんでした。 翌年2月には、再度進級できない状況となり、母親が来校しました。hisop

 保護者としての意向は、
「本人が頑張りたいというのでもう一度続けさせてやりたい」
という申し出でした。
 私からは成績の他に、試験やレポートの内容があまりにも拙く、意味の通じない内容が多いこと、今後学業を継続しても実習においてはさらに課題が多いことなどを話しました。また、このまま在学期限が終了して、25~26歳となり、それでも卒業できず何の資格も得られない可能性もあることから、果たしてそれでもよいものか、もう一度家族でよく話し合って結論を出してほしいと要請しました。
 S君とは春季休暇の前に面接をしました。S君は「今さら親に進路変更と言われても困る。ただ卒業できるかを考えると、とても不安だ」と言いました。さらに、父親や弟との関係、看護士になりたいと思う気持ち、自分を応援してくれている祖父母や友人とその両親がたくさんいることなど、21時過ぎまで綿々と話すS君を見て、
"在学・退学のどちらにしても多くの不安を抱え、帰るにも帰れないのだろう"
と痛いほど感じ、「遅いから早く帰りなさい」とは言えませんでした。
 3月末、S君はこれ以上学校での生活を続けても自分自身の学力では卒業が困難であると判断し、進路変更を決定、退学届を提出しました。
 その後S君は、ホームヘルパー2級の資格を取得し、アルバイトをしながら准看護婦養成所の受験準備をしています。

 保護者に
「S君の気持ちを大事にし応援する役割も大切だが、彼自身では考えられない将来をも見据えたうえで、判断をしてあげるのも役割ではないでしょうか」
と言ったことがよかったのかどうか、未だに自問自答を繰り返しています。
 ただ救われるのは、親元を離れたS君が今でも私のところに相談や報告をしに来てくれることです。そんなS君をいつまでも見守り応援していきたいと思います。

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○学生の応援団長でありたい
 今年7月、学生たちを海外研修旅行に引率しました。ドイツのカイザルスヴェルト学園を視察したとき、学生の一人が
「本校では先生と学生の関係は完全なる師弟関係ですが、こちらではどうですか?」
という質問をしました。
 どのような意味でその学生が"完全なる師弟関係"と言ったのか直接は聞いていませんが、学生の人生の分岐点にかかわる以上、真剣に、誠実に向き合い、どのようなときもいつまでも真のサポーターでありたいと思います。
 卒業式を迎えるたびに、学生の成長した巣立ちの晴れやかな姿に涙してしまいます。
「頑張ったね、よくここまで成長したね」
と、心のなかで学生一人ひとりに言葉をかけます。そして、社会の厳しさを考えるとき、看護という人生のハードルを乗り越える底力は培われたはずと、彼らを信じて見送っています。

*S君自身のプライベートな部分をかなり書かせていただきましたが、彼自身の了承を得たことをここに補足しておきます。

『Clinical Study』 2000年12月号(Vol.21 No.14)

※この記事は、当校副学校長片桐が教務主任時代に綴り、「心に残るあの学生」としてClinical Sutudy(クリニカルスタディ~看護学生の実習&国試&学生生活応援マガジン~:メヂカルフレンド社刊)にてご紹介いただいたものです。
注:現在使用されていない呼称・名称も、掲載当時のまま記載しております。

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